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世界中に山ほどある鑑定番組と『アメリカお宝鑑定団 ポーン・スターズ』の違いの一つは、値をつけただけで終わらないことだ。

たとえば1950年代製の真っ赤なコカ・コーラの販売機が持ち込まれる。コカ・コーラのシンボルカラーの赤じゃない。真っ赤に錆びついているのだ。

まだ缶コーラが開発される前なので、瓶入りコーラを売るマシンだが、中を開けると空っぽ。機械部分は壊れてなくなっている。『ポーン・スターズ』のリック・ハリソン親分は品定めをしながら言う。「ここにも、ここにも銃弾の穴が開いてるじゃないか」

射撃の的にしたのだろうか。世界中にコカ・コーラグッズのコレクターは多いが、これはどう見ても鉄クズだ。ところがこれを持ってきた男は400ドルで売りたいという。粗大ゴミ引き取り代で一万円くらい取られそうなのに。

「300ドルで買おう」

え? 古今東西の歴史と文学と科学に精通し、どんな骨董品にもその場でアンチョコなしでウンチクを滔々と語り出す博覧強記のリック親分、いったいどうした? ガラクタで300ドルももらった客はホクホク顔。しかし、彼は何も知らなかった。

リックは錆びた自販機をもう一人のリックの所に持っていく。骨董品修復のプロ、リック・デールの店だ。敷地内にはボロボロの自動販売機が山と積まれている。

リックの職人技で、真っ赤に錆びたコーラの販売機はピカピカの完動品として蘇った。修復費は2800ドル。高すぎない?

「いやいや。これなら7800ドルで売れるんだよ」

てことは、4700ドルの儲け! これを300ドルで売った客はテレビを観てくやしがったことだろう。

だから『ポーン・スターズ』はただの質店の日常ドキュメントではないのだ。リックとリックはあらゆるガラクタをリストアしていく。1930年代のガソリン・スタンドのポンプ、70年代のピンボール……。その後、修復屋のリックを主役にしたスピンオフ番組『アメリカン・ビンテージ大修復!ビフォー&アフター』も生まれた。

70年代よりも前のものは、お菓子のオマケみたいなものでも骨董品としての価値があることがよくわかる。では、80年代以降に作られたもので、今も価値を持っているもの、何十年先にコレクションされるものがどれだけあるのだろう。いちど最初の携帯電話が店に持ち込まれた回があった。バックパックくらいの巨大なものだ。引き取り値は10ドルもつかなかった。80年代以降、あらゆるものが便利になり、安くなったが、すべてはクズになってしまったんじゃないか? そんなことまで考えさせられる番組が『ポーン・スターズ』だ。

<町山智浩プロフィール>
テレビやラジオなどで幅広く活躍する映画評論家。米カリフォルニア州在住。
「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」「松嶋×町山 未公開映画を観る本」「トラウマ映画館」ほか、著書多数。